アルカリカチオンの溶媒和


 Ab initio MO法を用いてM+(M=Li, Na, K)水溶液系についてイオン-溶媒水分子間の軌道相互作用および電荷分布の計算を行った。 QM/MM法を用いてイオンの周りに171個の溶媒水分子を含んだ系の構造最適化を行い、得られた最適化構造を用いてイオンおよび130個程度の溶媒水分子までを量子化学的に取り扱った計算を行った。(Fig.1参照)




 中心のイオンからの距離によって水和層に分割し、各水和層における溶媒水分子1個あたりの平均値として解析を行った。 その結果、イオン-溶媒水分子間の軌道相互作用にはイオンの最外殻軌道による寄与が大部分であることが分かった。Fig. 2はΔr = 0.52Åで水和層に分割した時のイオン周りの溶媒水分子の分布を表しており、その時のイオンの最外殻軌道と溶媒水分子の軌道との間の相互作用の大きさaverage overlap population (Wn(r))をFig.3に示した。 イオンの溶媒水分子に対する影響範囲はLi+< Na+< K+の順により遠方まで及んでおり、それぞれ6, 7, 9Å程度であることが分かった。また最近接水分子との相互作用が各イオンで最も大きく、Li+> Na+> K+の順に小さくなることが分かった。 一般に波動関数は主量子数が増加するとピークが減少し、より遠方に広がったものとなる。これらの違いは各イオンの最外殻軌道の性質が反映されたものであると考えられる。



原著論文:
Masato Tanaka and Misako Aida, "An Ab Initio MO Study on Orbital Interaction and Charge Distribution in Alkali Metal Aqueous Solution: Li+, Na+ and K+," Journal of Solution Chemistry, 33, 887-901 (2004).  訂正